【読んでみたシリーズ#002】世界を変えた”箱”とは?『コンテナ物語』を読んでみた
最近、このようなご相談をいただくようになりました。
「寸法はこれくらいで、これくらいの重さの商品なんだけど、送料を安くする方法はないかなー?」
そのとき、私はいつも心の中でこう思うのです。
「商品開発の段階で相談してーーー!(ToT)」
国内のEC物流であれば、その製品がヤマト運輸の”ネコポス”や日本郵便の”ゆうパケット”で運べるサイズかどうかが送料を左右するポイントになります。
この場合、例えば製品のデザインや使いやすさを最優先にするか、送料を最優先にするかはトレードオフの関係にあるといえます。
読者の皆さんもその製品の戦略戦術によって判断されているのではないでしょうか。
これを海上輸送に当てはめると、「送りたい製品が海上コンテナ1本に収まるか」、「海上コンテナに効率よく積載できているか」がコストを左右するポイントになります。
今回は”20世紀最大の発明のひとつ”と称される海上コンテナについて、『コンテナ物語』という本を通じてご紹介します。
1.コンテナ物語
私が海貨業者(乙仲)として港湾で活動していたことは以前のブログにも書きましたが、当時は毎日のようにコンテナに触れていたので、この本に出てくる内容は非常に興味深いものでした。
コンテナが出現する前の世界では、モノを輸送するのはじつにカネのかかる ことだったのである。輸送費があまりに高くつくせいで、地球の裏側に送る ことはもちろん、アメリカの東海岸から中西部に送るだけでも経費倒れになりかねなかった。なぜ、コンテナはこれほど重要な役回りを果たすことに なったのだろうか。
引用:マルク・レビンソン. コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版 (pp.22-23). 日経BP. Kindle 版.
コンテナ自体に主役の素質があったのでないことは確かだ。 アルミかスチールでできた無機質なただの箱。 溶接されリベットで留められ、木の床と 二枚の大きな扉が片側についている。標準的なコンテナは空き缶と同じ で、ロマンのかけらもない。この実用的な物体の価値は、そのモノ自体に あるのではなく、その使われ方にある。さまざまな経路と手段を介して最小限のコストで貨物を運ぶ高度に自動化されたシステム。その主役が、コンテナである。
この無機質な箱の登場によって輸送費は大幅に削減され、世界の経済を変えました。
コンテナ以前の輸送費が高かった時代は、消費地に近い場所に工場を構え製造販売することがメーカーの強みでしたが、コンテナが普及した後は地球の裏側にモノを届けることが普通になり、企業の競争力が立地条件に左右されにくくなりました。
例えば、中国が世界の工場になったことはコンテナ以前は想像もできないことだったのです。
本書の秀逸なところは、主人公 マルコム・マクリーンの成功のポイントを「海運業とは船を運航することではなく貨物を運ぶ作業と見抜いたこと」とまとめているところです。
どの業界のマーケティングにも通じる名言だと思います。
コンテナ自体はマクリーンが登場する以前から存在していましたが、それを活用する思考法や標準化・システム化して全世界に広めたビジネスセンスが素晴らしいと感じました。
2.海上コンテナの解説
主に利用される海上コンテナの種類に20フィート(約6m)と40フィート(約12m)の2種類があり、40フィートには高さ8.6フィートの通常タイプと高さ9.6フィートのハイキューブタイプがあります。
そのほかにも冷凍貨物を取り扱うリーファーコンテナや重量物が積みやすいフラットラックコンテナなど、用途に応じて幅広いラインナップから最適なコンテナを選択することができます。
日本発のグローバル船社であるオーシャンネットワークエクスプレスジャパン(ONEラインジャパン)のウェブサイトにコンテナの寸法や最大積載量の詳細が掲載されていますので、これからコンテナを活用するという方はぜひ参考にしてみてください。
https://jp.one-line.com/ja/standard-page/container-specifications
3.ビル・ゲイツ氏、ひろゆき氏、岡田斗司夫氏が絶賛
ビル・ゲイツ氏が本書を推薦する際、次のような言葉を残しています。
- 二〇世紀後半、あるイノベーションが誕生し、全世界でビジネスのやり方を変えた。ソフトウェア産業の話ではない。それが起きたのは、海運業だ。
- コンテナは、この夏私が読んだ最高におもしろい本『コンテナ物語』の主役を務めている。
- コンテナが世界を変えていく物語はじつに魅力的で、それだけでもこの本を読む十分な理由になる。そのうえこの本は、それと気づかないうちに、事業経営やイノベーションの役割についての固定観念に活を入れてくれるのである。
また、ひろゆき氏はダイヤモンドオンラインの記事で、「人生を変えた本・ベスト3」の第2位に本書を挙げています。
僕がよく紹介している本ですが、『コンテナ物語 ーー 世界を変えたのは「箱」の発明』ですね。「コンテナ」というのは、船や飛行機で運ぶ「箱」のことです。その発明が世界を変えたということが書かれています。
引用:ダイヤモンドオンライン | ひろゆきの「人生を変えた本・ベスト3」とは?
発明というと、電気とかインターネットとかのような「科学者による大発明」ばかりが目立ちますが、「ただの大きな箱ですら世界を変える」というところに意外性があるのを教えてくれるんですよね。
少し内容を説明すると、「コンテナ」ができたことで、世界的な「輸送コスト」が大きく下がったんですよね。それにより、安い人件費の国でモノが大量生産されて、先進国のものづくりがどんどん不況になっていきました。
たかが「箱」のせいで、世界的な経済に大きな影響を与えてしまった。その目の付け所にとても感動して「おもしれー!」と思ったんですよね。なかなか手に入らない本になってしまっていますが、ぜひ読んでみてほしいですね。
岡田斗司夫さんもYouTubeで紹介しています。コンテナのイノベーションをうまく説明しているので、お時間があればぜひ見てみてください!
4.フィジカルインターネットとの親和性
以前のフィジカルインターネットのブログで「パレチゼーションやコンテナを活用したユニットロードシステムの標準化はフィジカルインターネットを成す重要なツールであり、いま話題の”物流の2024年問題”の解決策」と解説させて頂きました。
ユニットロード・システムとは、個々の輸送物をある単位(ユニット)にまとめ状態で、一連の輸送、保管、荷役を行い、それぞれに効果をもたらすことができるシステムをいいます。
引用:日本通運様ウェブサイト
使用する機材によって、台車系、ボックス系、パレット系、コンテナ系、容器系などがありますが、一般にはパレットを使用したパレチゼーション・システムとコンテナを使用したコンテナリゼーションの2つを指すことが多いです。ユニットロード化することにより、フォークリフトなどによる機械荷役が行われるので、荷役能率や輸送機関の運用効率の向上が図られるほか、物品の破損、紛失の防止、包装費の節約も可能になります。
コンテナは20世紀最大の物流革命でありながら、今後起こる”21世紀の物流革命”の重要な要素であると言えます。
コンテナがなぜここまでイノベーションを起こしたか、その要因として私は次の3つを挙げます。
①シンプルであること
②標準化
③システム化
シンプルな”箱”ゆえに、ユーザーにとって自由度の高い使い方ができる点。更には船に限らずトレーラーや鉄道でも運べる点が、標準化に繋がったと思います。
現在では、世界中どの港に行ってもほぼ同じ能力・規格のクレーンが設置されていて、ほぼ同じ荷役方法が採られていることは、まさに革命といって過言ではないでしょう。
5.最後に
さて、今回は私がおすすめする書籍『コンテナ物語』をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
サプライチェーンを構築するうえで少しでも課題や不安をお持ちの方はぜひ、こちらのページからお気軽にお問い合わせください!