【読んでみたシリーズ#003】たった一人の分析から事業は成長する!『実践 顧客起点マーケティング』を読んでみた(前編)
LOCAL LOGITEXは、お客様のサプライチェーンを代行するサービス(詳しくはこちらをご覧ください!)ですが、このサービスを始めたときから意識していることがあります。
それは、
「お客様の事業成長を支えるサービスであること」
「お客様の事業が成長することで、弊社も共に成長していくこと」
です。
「LOCAL LOGITEXを利用すると収益が上がる」
と謳えるようになることは、わたしたちの戦略のゴールと言えます。
2022年7月からサービスを開始して以来、これまで製造業の強みを活かした商品開発から調達・製造・物流手配というサービスを手掛けてきました。
今後は戦略をまっとうするため、サプライチェーンの上流に位置するマーケティングサービスの必要性を感じており、急ピッチでインプットを進めているところです。
ということで、
今回は”読んでみたシリーズ”の第3弾として、マーケティングを学ぶ際に出会った書籍のひとつ『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』をご紹介していきます。
1.N1分析とは?
著者の西口一希氏はP&Gやロート製薬、ロクシタン、SmartNewsなどのマーケティング責任者を歴任した方です。
その西口氏が提唱する「N1分析」とは、ひとりのお客様に焦点を当て、深く知り(深掘り)、そこから「アイデア」を掴んで実践に落とし込むという手法。
筆者がマーケティングにおいて最も大切にしているのは、一人の名前を持つ 具体的な顧客、〝 N = 1〟を徹底的に理解することです。 名前の見えない 複数の誰かではなく、実在する一人のお客様に会って、 ブランドとの初めての出会いからこれまでの経験に丁寧に耳を傾ければ、購買行動とその行動 を左右する深層心理の関係が有機的に繋がります。その深い理解と共感を通じて、 ビジネスを成長させる「アイデア」が必ず見つかるのです。
引用:西口 一希. たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS) (p.5). 株式会社翔泳社. Kindle 版.
本書では、ロート製薬時代に販売本数日本一の化粧水に育て上げた「肌ラボ」や、男性用全身洗浄料市場でNo.1になった「デ・オウ」を例に挙げたN1分析のエピソードを紹介しているので、ぜひご覧ください!
2.マーケティングで大事なこと
西口氏はN1分析をもちいて得た、”独自性”と”便益”を兼ね備えた「アイデア」があるかどうか、これがマーケティング上で最も大事な要素だと言っています。
独自性とは、
・五感で感知したことがない個性(見たことのない、聞いたことのない、触ったことのない、経験したことのない、、、)に人は注目する。
・独自性の有無は、”注目に値するかどうか”で確認できる。
また、ここでいう”独自性”は一般的な”差別化”とは似て非なるもので、あくまで唯一無二な”Only-one Unipueness”を意味しています。
本書では、本書ではわかりやすい例としてスティーブ・ジョブズの言葉を紹介しています。
「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい?そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを見極めることが重要なんだ」
一方の便益とは、
・顧客にとって都合がよく利益(メリット、ベネフィット)があること。
・それを利用することで得られる価値(便利、得、有利、快、楽など)
・その商品やサービスが買うに値するか、時間を使うのに値するかの判断を左右する。
この”独自性”と”便益”を兼ね備えたものを「アイデア」と呼ぶことができます。
3.「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」
「アイデア」には大きく分けて次の2つがあります。
①商品やサービスそのものとなる「プロダクトアイデア」
②商品やサービスを対象顧客に認知してもらうための手段である「コミュニケーションアイデア」
ここで注意すべきは、
「プロダクトアイデア」の独自性がやや弱くても、便益があれば「コミュニケーションアイデア」で補強して一時的な売上を上げることが可能。
ただし、商品やサービスそのもの(=プロダクトアイデア)に便益がなければ中長期的な売上を獲得することは不可能ということを西口氏は言っています。
もちろん、「プロダクトアイデア」の独自性は競合の追随によって薄まっていくので、そこで重要となるのが「コミュニケーションアイデア」です。
広告のクリエイティブに独自性がないと、お客様に振り向いてもらえないからです。
広告に接触すること自体が楽しい、面白い、心地いいといったプラス要素をもたらせるかどうかが重要と説いています。
これは『100億円マニュアル ロケット・マーケティングで顧客を掴め!』で、売上を伸ばすためには、”長く売れ続ける強い売りモノ(ビジネスモデル)”と”それらをロケットのような強力なエンジン、つまり強力な販売(広告)力”の掛け算が必要といっているのと通じるものがあります。
4.SNSマーケティングの落とし穴
西口氏は、現実的にはほとんどの企業やベンチャーには大規模な広告展開ができないことを踏まえ、容易に始められるSNSマーケティングに落とし穴があることを次のように説明しています。
ソーシャルマーケティング、インフルエンサーマーケティング、バズマーケティングなど デジタル分野を中心に様々な新しいコミュニケーション手法 が提案されていますが、 強い「プロダクトアイデア」 がなければ、このような手法で商品やサービスが広く拡散することはありません。
投資すれ ば、 インプレッション数や再生数自体は確かに伸び、情報自体も拡散した ように見えますが、それが大きな認知形成や購買に繋がることはありませ ん。
インプレッションが2000万あった、動画が300万回再生された と言っても、筆者が知る限り、その結果として大きな売上になったケース はあまりないのが現実です。
これらの手法が問題なのではありません。ただ、 相対的な価値 でしかないプロダクトの比較優位性を訴えるだけでは、 戦略として不十分な時代になってしまったということです。
独自性を伴っ た便益という「アイデア」 そのものが問われる時代になったのです。
引用:西口 一希. たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS) (pp.45-46). 株式会社翔泳社. Kindle 版.
まずはN1分析のデータをもとに「プロダクトアイデア」をつくること。これが重要といえますね!
5.市場から撤退する前に
西口氏は、マーケティングが成功する上で、もう一つ重要なこととして「早期の認知形成」を挙げています。
見た目の売上上昇が止まった商品を市場から撤退する前に、売り上げが伸びなかったのは「プロダクトアイデア」自体に問題があるのか、それとも認知不足なのかを見極めないと、成長機会を自ら摘んでしまうと、西口氏は指摘しています。
現代最強のマーケターといわれている森岡毅氏も著書『確率思考の戦略論』で「戦略、つまり経営資源の配分先は、結局のところPreference(好意度)、Awareness(認知)、Distribution(配荷)の3つに集約される」と書いています。
自社の商品やサービスには絶対的な自信があるのに何故か売れない・・・という方はまずは認知度を上げる取り組みをしてみてはいかがでしょうか。
6.前編のまとめ
(1)「顧客起点マーケティング」は一人のお客様を起点にビジネスを構築
(2)N1分析から独自性x便益の「アイデア」を生み出す
(3)マーケティングに必要な3要素
①プロダクトアイデア
②コミュニケーションアイデア
③早期の認知形成
7.最後に
さて、今回は西口一希氏の『実践 顧客起点マーケティング』をご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
次回は後編として、マーケティング戦略の立案について具体的な内容をお届けできればと思います。
「他にもこんな本を紹介してほしい!」、「こんなことを記事にしてほしい!」などのリクエストはもちろん、サプライチェーンを構築するうえで少しでも課題や不安をお持ちの方はぜひ、こちらのページからお気軽にお問い合わせください!